« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »

2012年8月

改正高年齢者雇用安定法が成立

希望者全員を65歳まで再雇用するよう企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が29日の参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立しました。

来年4月、男性の厚生年金の受給開始年齢が61歳に引き上げられるのに伴い、賃金も年金もない「空白」期間を回避する狙いがあります。

企業側が事実上、再雇用する対象者を選別できる今の仕組みを廃止することが柱ですが、厚生労働省は今後、勤務態度や健康状態が著しく悪い人を対象外にできる指針を作る方針です。

施行は2013年4月です。

制度の変更には時間がかかります。
指針の発表等、今後の動向を注意深く見ながら、早めに準備しましょう。

|

権利濫用の人事異動?(マンガ労務相談15)

Ido_2Ido1Ido2Ido3Ido4

登場人物はこちら

 人事権は広く会社に認めらており、「左遷」という言葉があるように、懲罰的な人事異動が行われることも珍しくはありません。
就業規則等に「会社は業務上の必要に基づき、配転を命じることがある」というような異動条項があれば,通常、会社はこれを根拠に配転命令を発することができます。
             

 しかし、人事権が広く会社に認められているとはいえ、何でも許される訳ではありません。
就業規則上に異動条項がある場合でも、個々の従業員が会社との間で職務内容や勤務場所を制限する特別な合意(特約)をしている場合には、その合意の範囲を超える異動命令は認められないことになります。
            
 また、下記のような人事異動・配置転換は、人事権の濫用であると判断されることがあります。
(1)業務上の必要性が存在しない場合
(2)仮に必要性が存在したとしても他の不当な動機・目的による場合
(3)労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合

            
(1)の「業務上の必要性」について、最高裁判決(東亜ペイント事件)は、「当該転勤先への異動が余人をもって替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは」、これを肯定すべきであると述べています。
この判示部分は,この事案に限定されたものではなく、広く正社員の異動命令一般にあてはまるものと考えられます。
したがって、正社員に対して通常行われているような人事である限り、業務上の必要性が否定されることはまずありません。
            
(2)の「不当な動機・目的」として考えられるのは、例えば,組合活動を理由にした人事異動である場合や、社員を退職に追い込むことを目的として行われた人事異動などです。
          
(3)の「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」については、これまでの裁判例上は限定的にしか認められていません。
単身赴任となる人事異動でも、「通常甘受すべき程度」とされます。
 だだし、看護を要する病人の家族がいる場合のように、社員の異動により家庭生活上の大きな支障が生じる場合であれば、「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」があると判断される傾向にあります。
            
 育児休業・介護休業法26条は、「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」と定めています。
 また、労働契約法3条3項は仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)への配慮を求めていることから、育児や介護に支障があるような異動命令は、権利濫用と判断される可能性が高まるので注意が必要です。
 また、社員本人の健康状態に問題がある場合において、社員の健康に著しい不利益をもたらす異動命令が、権利濫用とされる可能性があります。
            
 さて、悪尾さんの人事異動は権利濫用になるでしょうか?
          
 老夢課長の不当な動機、目的と言えなくもありませんが、あくまでも業務上必要な異動であり、家庭生活上の大きな支障も生じないということであれば、権利濫用とまでは言えないでしょう。
悪尾さんがどうしても納得いかなければ、会社と争うことになりますが、退職するならいざ知らず、今後も仕事を続けるのであれば、会社と争うことは得策ではありません。
納得はいかなくても、会社の命令に従わざるを得ないでしょう。 
            
 日本の労働法は労働者保護が中心で、例えば解雇はとても厳しい制限がありますが、不思議と人事権は会社に広く認めらているので、人事異動は会社にとっては数少ない武器とも言えます。
            
 とは言え、上記のように権利濫用とされることもありますし、権利濫用とまでは言えなくても、納得が得られない人事異動ばかり行っていると、その異動の対象従業員だけではなく、会社全体の士気が低下することもありますので、人事権の行使は慎重に行うべきでしょう。

|

« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »