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2012年5月

労災保険の第三者行為災害(マンガ労務相談 12)

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 労災保険給付の原因である災害の中には、通勤途中に自動車にはねられたり、仕事で道路を通行中に建設現場から飛来した物に当たり負傷したりする災害もあります。
 「第三者行為災害」とは、このような※第三者の行為などによって生じたもので、労災保険の受給権者である被災労働者または遺族(以下「被災者等」)に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものをいいます。

(※「第三者」とは、当該災害に関する保険関係の当事者(政府、事業主および労災保険の受給権者)以外の者のことをいいます。
また、第三者行為災害は健康保険でも該当します。ここでは労災保険について説明しますが、基本的な考え方は同じです)

 第三者行為災害に該当する場合には、被災者等は第三者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険に対しても給付請求権を取得することとなります。
 この場合、同一の事由について両者から損害のてん補を受けることになれば、実際の損害額より多くの支払いを受けることとなり不合理な結果となります。
 また、本来被災者等への損害のてん補は、政府によってではなく、損害賠償責任を負う第三者が最終的には負担すべきものであると考えられます。
 このため、労災保険法第12条の4において、第三者行為災害に関する労災保険給付と民事損害賠償との支給調整を次のように定めています。

①被災者等が第三者から先に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で労災保険給付をしないことができる(「控除」)。
②先に政府が労災保険給付をしたときは、政府は、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険給付の価額の限度で取得する。
(政府が取得した損害賠償請求権を行使することを「求償」といいます)。

●第三者の行為が自動車事故の場合は・・・

 自動車事故の場合、労災保険の給付と自賠責保険等(自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済)による保険金支払のどちらか一方を受けることができます。
 この場合、どちらを先に受けるかについては、被災者等が自由に選べますが、労働基準監督署は通常、先に自賠責保険等からの保険金支払を受けるようにと指示します。
 先に自賠責保険等からの保険金支払を受ける場合(これを「自賠先行」と呼んでいます。)には、仮渡金制度や内払金制度を利用することによって損害賠償額の支払が事実上速やかに行われること、自賠責保険等は労災保険の給付より幅が広く、例えば、労災保険では給付が行われない慰謝料が支払われること、療養費の対象が労災保険より幅広いこと、さらに休業損害が原則とし100%てん補されること(労災保険では60%+特別支給金20%)など被災者等にとってのメリットがあります。

 自賠先行の場合には、同一の事由について自賠責保険等から支払われる限度額まで労災保険の給付は控除されます。
 また、労災保険の給付を先に受ける場合には、同一の事由について自賠責保険等からの支払を受けることはできません。
 なお、自賠責保険等に引き続いていわゆる任意保険(自動車保険又は自動車共済)による保険金支払を受けるか、若しくは労災保険の給付を先に受けるかについても、自賠責保険等と同様に、被災者等が自由に選べます。


●自賠責保険や任意自動車保険で全額賠償される場合は、労災の申請はしなくていいの?

 被災者等の損害が自賠責保険等で全額賠償される場合は、労災給付は行われないので、面倒な労災申請や第三者行為災害届を提出しなくてもいいのでは、と思うのではないでしょうか。
 確かに労災の手続きをしないでも問題が生じないケースもありますが、災害により休業した場合、自動車保険から休業損害を全額賠償されても、労災保険から支給される「休業特別支給金」(平均賃金の20%)は調整されることなく全額支給されます。
 申請しないと当然支給されませんのでご注意ください。
 また、業務災害により休業した場合は、「労働者死傷病報告」を提出しなくてはなりません。
労働者死傷病報告を提出しないと、「労災隠し」(こちらの記事参照)となりますのでご注意ください。

 なお、自賠責保険の賠償額には限度額があるので、第三者が任意保険に加入しておらず支払い能力が無ければ、自賠責保険の限度額を超えた補償は労災保険から行うことになります。
 また、自動車の任意保険は過失相殺を行うため、自分にも過失がある場合は自己負担が生じることがあります。
 その場合は、過失相殺されない労災給付の方が有利な場合があります。(労災給付も事故原因が故意や重過失の場合は給付制限されることがあります。)
 従って、大きな事故で賠償額が大きくなると予想される場合や、被災者等の過失が大きい場合には、自動車保険先行か、労災先行か、十分考慮する必要があります。

●第三者行為災害の手続き
 被災者等が第三者行為災害について労災保険給付を受けようとする場合には、被災者の所属する事業場を管轄する労働基準監督署に、通常の労災申請に加え、第三者行為災害届提出する必要があります。
 なお、第三者行為災害届には、念書や交通事故証明書等の添付書類が必要となります。

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東京都「契約社員に関する実態調査」結果について

東京都では、非正規労働者の実態を把握するため、定期的にパートタイマー・派遣労働者・契約社員に関する調査を行っています。

今回、契約社員に関する調査結果が発表されました。

(この調査での契約社員の定義:一日の所定労働時間及び一週の所定労働日数が正社員とほぼ同じで、期間の定めのある契約に基づき直接雇用されている者)

調査結果のポイント

●約5割の事業所で契約社員を導入

  • 契約社員を導入している事業所の割合は46.6%となっている。
  • 契約社員を活用している理由としては、「専門的・技術的な業務に対応するため」が52.7%と過半数を占めて最も多い。

●契約社員用の就業規則がある事業所は6割以上

  •  契約社員に適用する就業規則について、「契約社員用の就業規則を適用する」の割合が前回(平成19年度)調査と比べて18.0ポイント増加し、64.1%となっている。

●契約社員の約6割は待遇などに正社員との格差を感じている

  • 契約社員の58.6%が待遇などに正社員との格差を感じており、そのうちの68.6%はその格差を合理的ではないと思っている。特に不合理な点としては、「賃金・賞与」の割合が最も多く、「退職金」、「雇用の安定性」の順となっている。
  • 正社員との仕事の責任の比較について、「正社員より軽い」の割合は事業所が47.6%と約半数を占めている。一方、契約社員は23.3%となっており、契約社員全体の4分の1以下となっている。

●他社で契約社員として働いたことがある者の約3割が雇止めの経験がある

  • 他社で契約社員として働いた経験がある契約社員のうち、雇止めを通告されたことがある契約社員は28.6%となっている。
  • 雇止めを行ったことがある事業所に雇止めの理由を聞いたところ、「労働者の能力不足」が50.0%で最も多い。

●雇止め法理(※)の条文化を期待する契約社員の割合は4割を超えている

(※)雇止め法理:契約更新を何度も繰り返し、期間の定めのない契約と実質的に異ならない等の場合は、解雇に関する規制が類推適用される。

  • 「条文化すべき」の割合は、事業所では21.8%、契約社員では42.0%となっている。

正社員との仕事の責任の比較結果は興味深いものです。

約半数の会社が、契約社員は正社員より責任が軽いと考えていますが、契約社員は約2割しか正社員より責任が軽いと考えていないとのことです。

このギャップは、会社の人事労務担当者は認識しておくべき事項でしょう。

契約社員等の有期雇用契約者は、会社が思っている以上に不満を溜めている可能性があります。

その不満が労務トラブルに発展したり、トラブルまでには至らなくても、職場のモチベーション低下をもたらしたりするでしょう。

契約社員や派遣社員など、現在の職場は様々な雇用形態の従業員が混在するので、マネジメントは従来より難しくなっています。

立場や価値観が違う人達をまとめていくのは簡単なことではありませんが、このような職場が当たりまえとなった現在、会社の成長のためにも、様々な立場の従業員をとりまとめて、職場のモチベーションを上げていくマネジメントは必須です。

現在の難しいマネジメントができる管理職を育成できるか否か、それが今後の企業成長のカギとなるでしょう。

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普段の通勤経路以外で生じた通勤災害(マンガ労務相談 11)

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 労災保険法では通勤について、「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」と規定しています。

 合理的な経路・方法であれば通勤災害になり、会社に申請した経路・方法か否か、また、会社が経路や方法について禁止しているか否かは、通勤災害の認定上関係ありません。

 合理的な経路、方法については、「住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいうものである」とされています。
 また、通勤方法については、「鉄道、バス等の公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、通常用いられている交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず一般に合理的な方法と認められる」とされています。

 通勤経路を大きく逸脱する場合などは合理的な経路・方法と認められない可能性がありますが、自宅と会社との間の経路・方法が合理的なものである限り、会社に届け出た通勤経路・方法以外でも、通勤災害となります。

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