2社以上で勤務する場合の割増賃金
多くの企業では「副業」は禁止されています。
しかし、昨今の不景気で会社都合の休業をせざるを得なくなり、特別に副業を認めるというケースも増えています。
副業についての注意点はいくつかありますが、今回は副業に関する労働時間や割増賃金についての注意点についてご説明いたします。
(例)さかばさんがA社で6時間働き、その後B社で3時間働いた場合
労働基準法では労働時間が1日8時間を超えた場合に、割増賃金の支払いを義務づけています。
となると、A社もB社も、さかばさんの労働時間は8時間を超えていないので、割増賃金の支払いはしなくてもよいのでしょうか。
答えは否です。
労働基準法38条1項には、
「労働時間は、事業所を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とあります。
つまり、さかばさんの労働時間は、A社の6時間とB社の3時間の合計「9時間」となります。
さて、ここで問題になるのは、8時間を超えた1時間の割増賃金はA社、B社、どちらが支払うのかということです。
この点については学説もわかれており、
①労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主が時間外労働の手続きなどを負うという説、
②労働者の1日の労働時間が8時間を超えて以降使用する事業主が義務を負うという説があります。
さかばさんの本業はA社で、副業として後からB社と契約して、A社の終業後にB社で働くとなった場合は、どちらの説によっても、B社が割増賃金を支払わなければならなことになります。
この労働時間の通算については、あまり知られていないように思います。
B社が通算について知っていたとしても、B社が割増賃金を支払うためには、A社での労働時間を把握する必要があります。
A社での労働時間を把握するという面倒な作業を、果たしてB社が行うでしょうか・・・
現実は通算してきちんと割増賃金を支払っている企業は少ないと思われますが、法律は上記の通りなので、通算して8時間を超える場合に割増賃金を支払わないことは違法となります。
割増賃金の問題以外にも、副業は長時間労働になる場合が多いので、労働者の健康問題など、企業の安全配慮義務の問題も考えなくてはいけません。
ですから、副業を認める企業、または副業している労働者を受け入れる企業は、勤務時間について細心の注意を払う必要があるでしょう。
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