川崎市立病院に是正勧告(宿日直勤務について)
川崎市立川崎病院(同市川崎区)が、医師に残業代の一部を支払っていなかったとして、川崎南労働基準監督署から労働基準法に基づく是正勧告を受けていたことが16日、分かった。
同病院によると、残業代未払いの対象は医師175人で、平成20年10月~22年10月までの支給分総額約1億1400万円。来年度までに全額支払う。
同病院は従来、宿直勤務(午後5時~翌日午前8時半)にあたる医師に宿直手当と診察や治療などの割増賃金だけを支払っていたが、同労基署が21年9月に待機などをしている時間も残業に当たるとして残業代を支払うように勧告した。同病院によると、地方自治法の規定で、20年9月以前の未払い分は時効という。
同病院庶務課は「指摘されるまでは適法だと思っていた。労基署と病院側の残業に関する解釈が違っていた」と話している。
「宿直勤務」と言われても、日勤の会社員だとあまりピンとこない話だと思います。
「宿日直勤務」に関して、労働基準法41条で次のように定められています。
「労働基準法で定める労働時間、休憩、及び休日に関する規定は、次のいずれかに該当する労働者については適用しない。
○農水産業従事者○管理監督者等○監視・断続的労働従事者(宿日直勤務者)」
つまり、宿日直勤務は断続的労働ということで、労働時間、休憩、休日は労働基準法の適用外になります。
なお、監視・断続的労働従事者、宿日直勤務者で法41条の適用を受けるためには、労働基準監督署の許可が必要です。
しかし、宿日直勤務であればすべて法41条の対象になるわけではありません。
病院における許可基準は通達で次のように示されています。
(1)勤務の態様
常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみを認めるものであり、病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温等の特殊な措置を要しない軽度の、又は短時間の業務を行うことを目的とするものに限ること。したがって、原則として、通常の労働の継続は認められないが、救急医療等を行うことが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分とりうるものであれば差し支えないこと。
なお、救急医療等の通常の労働を行った場合、下記3のとおり、法第37条に基づく割増賃金を支払う必要があること。
(2)睡眠時間の確保等
宿直勤務については、相当の睡眠設備を設置しなければならないこと。また、夜間に充分な睡眠時間が確保されなければならないこと。
(3)宿日直の回数
宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。
(4)宿日直勤務手当
宿日直勤務手当は、職種毎に、宿日直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1を下らないこと。
上記の許可基準から判断すると、救急医療を頻繁に行なう川崎市立病院のような大病院では、法41条の宿日直勤務が許可されることは少ないかと思います。
今回のケースは、法41条の適用を認めず、また、診療をしていない待機時間であっても、急病人等の対応のために待機しているので、仕事から解放される休憩時間でもなく、労働時間となるとの判断だったのでしょう。
この病院の宿直問題は、川崎市立病院に限った話ではなく、他の病院でもよく聞く問題です。
人件費を抑えるために、法41条を都合よく解釈して運用している病院が多いのかもしれません。
川崎市立病院は1億円超の未払い残業代を全額払うと言っていますが、経営が厳しい病院が多い中、払いたくても払えない病院もあるでしょう。
もちろん、経営難だから残業代を払わなくてもよい、ということが認められるわけもありません。
様々な問題がある現在の医療ですが、このような勤務時間・残業時間の問題も深刻な問題の1つです。
病院の努力も必要ですが、それだけですべてを解決することは難しいと思うので、やはりしっかりとした国の政策・対応が重要ではないでしょうか。
なお、病院の宿直勤務に関して、「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について 」 という通達があるので、興味のある方はご参照ください。
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